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ケイ往診クリニック 森河です

いつも当ブログをご覧頂きありがとうございます。ケイ往診クリニックの森河です。

当院は2022年4月に開院し、ありがたいことに「ホームページとブログを見て当院に来ました」「4月にチラシが届いていたので取っておきました」と患者様やご家族様から言って頂くこともございました。

1からのスタートでしたので、こちらが発信した情報を受け取って頂けたことが分かって、とても嬉しい気持ちになりました。

これまで、ブログは松原先生に書いてもらっていましたが、私たちは医師3人で1つのチームですので、是非ぞれぞれの医師の文章を読んで頂きたいと思い、ブログを書かせて頂いております。

 

新型コロナウイルスの流行後、訪問診療のご依頼が増えたように感じます。

その理由の一つに、病院や施設が面会禁止になったことが影響していると思っています。

ただ、これをご覧になっている医療関係者以外の方からしますと、訪問診療ってどんな感じなんだろう、と最初はイメージし辛いかもしれませんね。

 

訪問診療とは、通院が困難な患者様に対し、医師が患者様のご自宅に直接伺い、診察・投薬・検査・処置を行うことをいいます。

当院では、検査は採血検査やエコー検査、心電図の検査(技術の進歩により持ち運びができるサイズの医療機器が増えました)ができますし、処置は在宅酸素・中心静脈栄養の管理や、癌を患っておられる方の緩和ケア(痛み止めや医療用麻薬などを使い、苦痛の無いよう過ごして頂くことを目的とします)、状況次第ですが胸水や腹水をご自宅で抜くことも可能です。

病院と同じとはいきませんが、様々な医療をご自宅で受けて頂けます。

また上でも書きましたが医師3人のチームですので、24時間365日対応可能です(休日や夜間は主治医以外の対応になることもございます)。

 

当院からの訪問診療を希望される場合、その患者様に担当のケアマネージャー様や訪問看護ステーション様がいらっしゃる場合は、その方を通じて当院にご連絡下さるとスムーズかと思います。

もしくは、当院のホームページ上段にあります「ご依頼はこちら」を利用して頂いても構いませんし、お電話で直接お問い合わせ頂いても結構です。

 

また次回のブログでお目にかかります。

ご覧頂きありがとうございました。

 

西宮市の訪問診療 ケイ往診クリニック

医師 森河 紘希

在宅医療と救急車

こんにちは。

久しぶりの更新となります。

本日のテーマは「在宅療養中に状態が急変したら・・」です。よろしくお願いします。

 

在宅療養は病院と違い医療者が常に横にいるわけではありません。そんな中、家で療養するのは大きな不安がつきまとうと思います。

「私の身体に、もしくは大切なご家族の身体に何かあったときにはどうしたらいい? 私はなにもわからないのに。」という不安は在宅療養をされる方、支える方全員が持たれる不安だと思います。

 

では実際に自分たちの手に負えない事態が生じた際はどうしたらよいのでしょうか?

そんな時、在宅療養をされている皆さんには選択肢があります。

①救急車を呼ぶ

②訪問看護師、在宅主治医に連絡する

です。

それぞれについて起こりうる自体を少し掘り下げてみます。

 

①救急車を呼ぶ

日本には極めて優れた救急医療のシステムがあり、多くの場合救急要請から数分で要請場所まで救急隊員が救急車と共に駆けつけてくれ、必要な応急処置を受けられます。驚くべきことにこの極めて優れた救急搬送システムは日本では無料で提供されています。

この「救急車」ですが、在宅療養中の患者さんにとっても大変心強いサポーターです。我々ケイ往診クリニックでも電話での症状聞き取りや往診の結果、救急車を要請することはあります。

では、何かあったとき全てのケースで救急要請が望ましいのでしょうか?

実は一概に「はい」とは言えないのです。

救急車を呼ぶ時の皆さんの心の声は何と言っているでしょうか? きっとこう言っていると思います。

「助けて!」もしくは「何とかして!」

こういった声に基づく要請を受けた救急隊員は全力で「助け」に来てくれるのです。

では、救急車で病院へ運ばれた転帰はどうなるでしょうか? 実は転帰は3個しかありません。

1)完全に元の状態まで回復する

2)治療の甲斐なく病院でお看取りになる

3)障害を負って(元の状態にまで戻らず)退院する

です。

多くの人は「(1)完全に元の状態にまで回復する」ことを願って救急要請をするでしょう。その結果が臨んだとおりであれば最も良い結果です。

(2)の結果も、残念な結果ですがやむを得ないことも多く「出来るだけのことをして無理だったんだ」と納得もしやすいかもしれません。

でも実は多くの人が救急要請をする際に想定しておらず、実際に陥って困ることになるのが「(3)障害を負って(元の状態にまで戻らず)退院する」です。生命は助かったけれど意識が戻らず寝たきり、入院中に筋力低下が進み寝たきり、呼吸が弱いから気管挿管や人工呼吸、、などです。

最近は急性期病院でも意思確認をしっかり行いますから希望しない処置をされることは減っていますが、意思確認できない状況だとそうもいきません。救急隊や救命医は全力で「生命を助けるための」医療を行います。

想定していなかった(3)の状態になった時、搬送された急性期病院がずっと入院させてはくれることはあり得ません。病状が安定したところで他の病院に移るか(病床に空きがあれば、です。日本ではこの区分の病床が今後減っていきます)在宅療養に戻ることになるのです。

(1)(2)(3)どの結果になったとしても受け入れる覚悟があれば救急車は非常に有力な選択肢です。

 

救急車を呼ぶ時にもう一つ注意しておかなければならないことがあります。それは救急隊の応急処置です。

例えば「がんの終末期で最期を家で穏やかに過ごしたい。蘇生処置を希望しない」方が在宅療養中に不測の事態が生じ、救急隊を呼んだとします。

その際の救急隊の行動原理は「生命を助ける」です。本人や家族の意思と無関係に処置が始まってしまう可能性があるのです。

全国で「救急隊の蘇生や搬送中止」はかかりつけ医の指示の下で容認される傾向にありますが、判断は各消防本部に委ねられています。つまり、蘇生や搬送中止を望んでもそうならない可能性があることには十分な注意が必要です(少なくとも私がこれまで医療を行っていた地域では救急隊の蘇生や搬送中止は認められていませんでした)。

 

いかがでしたでしょうか。119番に掛けるだけで救急車は来てくれますが、起こりうる結果を知った上で判断に繋げる必要があります。

次回では、②訪問看護、在宅医に連絡する

について掘り下げたいと思います。

本日もありがとうございました。

 

少しでも在宅医療への理解に繋がればと思い、本ブログで情報発信をしています。本ブログを読まれて不快な思いをされる方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

 

西宮市の訪問診療、在宅医療

ケイ往診クリニック

松原 翔

 

生きることの全体像~ICF②~

こんにちは。

GWも折り返し、、でいいのでしょうか。医師という職業を選んでからこのかた、GWや盆、正月といった日に長期休みをとれた試しが無いので、世間一般の感覚がよくわからなくなっています。「医師は世間知らず」ということはよく聞きます。自覚はあります。

 

さて本日はICFについて少し掘り下げたいと思います。

ICFとは生活全体を俯瞰するためのツールであり、分類です。生活に関連した分類なので、実は障害の有無にかかわらず全ての人を対象とすることができます。

まずは生活を二つの視点から見てみます。①「生活機能と障害」②「背景因子」です。

 

①「生活機能と障害」とはA「身体にある障害の有無や程度」、B「今の身体で出来ること、出来ないこと、その結果どこまで活動に参加できるか、しているか」という視点です。

障害自体は加齢により背負ってしまうこともありますが、病気が原因となっていることもあります。ですので、ここで「ICD(国際疾病分類)」とリンクしています。

A「障害の有無や程度」は身体を客観視します。どこにどのような障害があるのかを分類していきます。

例えば、「脳梗塞が原因で右半身麻痺と失語症がある」といった具合です。これを障害の種類と程度でコード化します。

B「今の身体で出来ること、出来ないこと」は日常生活にどこまで制限が出ているかを分類するものです。細分類として「一人でどこまで出来るか」「手助けや福祉用具を用いればどこまで出来るか」という評価があります。

例えば、先の方で言えば「片麻痺があるため望むところへ移動できない(一人の場合)」が「車椅子を用いて外出することができる(手助けや福祉用具を用いてどこまでやっているか)」といった具合です。

この場合だと、「片麻痺があるため望むところへ移動できない」は「d460.4」に該当します。「d460」は「移動すること」に関する項目、「.4」は「~することが非常に困難である」という意味合いです。

この方は一人では移動できないのに、車椅子を用いれば移動できますね。その場合は「d460.1」となります。「.1」は「~することが少しの困難を要する」です。支援の力により生活機能が向上していることが示されました。

これを生活の様々なシーンに当てはめて行くわけです。

例えば「食事」「トイレ」「入浴」「会話・コミュニケーション」「認知」などです。

このように系統立てて見ていくことで、その人が一人だとどうなのか、支援の力を使うとどうなのか、ということを把握し共有することができます。

ここまでは日常生活レベルのお話ですが、ICFではさらに踏み込んで、「どこまで社会に参加しているか」も見ています。

先の例だと「(右片麻痺と失語があるが)デイサービスに参加している」は「d910.1」といった具合です。

 

②「背景因子」

ICFでは個人の障害のみならず、周囲や個人がおかれている状況にも目を向けています。

その人がおかれている環境や、その人自身の影響力を観る視点です。

例えば上記の方が、階段のみでエレベーターの無いマンションの高層階に住まれていた場合とバリアフリーのお宅に住まれていた場合では、外出に関わる困難さが明らかに異なりますね。

環境因子はそういった周囲の環境を分類していきます。住環境のようなわかりやすいものから、「気候」「住民サービス」「政治」といったものまで含みます(国際分類ですので、例えば日本の医療、介護、福祉サービスは世界を見渡しても非常に高水準ですが、他の国を見渡したときに同じサービスを受けられるとは限りません)

他にもその人自身のキャラクターや性格が生活に影響することもあります。そういった視点もICFは持ち合わせています。

 

いかがでしたでしょうか。正直わかりにくいと思います。しかもICFの分類全てを全員に当てはめて行こうとすればいくら時間と労力があっても足りません。私たちもパッと「d480.3」とか言われても、コード表を見ないと何のことかわかりません。

大切なことは分類に一生懸命になることではなく、こういう視点を共有して持つことだと考えています。

各々がバラバラの評価尺度で患者さんを観ていれば適切な支援がわからなくなってしまいます。そういうときの「ICF」ではないでしょうか。

「生活全体を見つめる視点」を大切に、寄り添う医療を続けていきたいと思います。

 

本日もありがとうございました。

少しでも在宅医療への理解に繋がればと思い、本ブログで情報発信をしています。本ブログを読まれて不快な思いをされる方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

 

西宮市の在宅医療 訪問診療

ケイ往診クリニック 医師

松原 翔

休日コラム〜究極の個人情報

こんにちは。

GWに入り雨がチラホラ。GW中も当然待機日があるわけですが、待機フリーの日に限って雨です。生まれつきの雨男です。

私が訪問診療に伺う皆様。私が訪問する日は雨が降ります、ご注意を。

 

さて、今日は休日ですので肩休めにコラムを書いてみようと思います。

 

個人情報保護法が成立ししばらく経ち、個人情報を厳格に取り扱うことはかなり一般的になってきました。保護されるべき個人情報は非常に多岐に渡ります。では、このコラムを読んでいただいている皆さんに一つ質問してみたいと思います。

大切な個人情報を一つ挙げるとすれば、何を選びますか?

 

住所? 収入? 家族構成? 病名? もしくはキャッシュカードやクレジットカードの番号?

もちろんこれらは極めて重要な個人情報ですが、私が考える究極の個人情報は、、、

 

「遺伝情報」です。つまりDNAの配列ですね。

 

「なぜ? 遺伝情報なんぞ漏れたところで実損があるわけではないのに。キャッシュカード情報やクレジットカード情報の方が漏れてほしくない」と思われた方、自然な感覚だと思います。

でも実は病院において最も厳重に取り扱われている情報の一つが「遺伝情報」です。病院においても遺伝情報にアクセスするためには2重3重のロックがあり、限られた者しかアクセスできないようにしているのです。

 

どうしてここまで厳重に管理されているのでしょうか?

それは「遺伝情報は患者本人のみならず、周囲の人間(家族)に極めて強く影響する」ためです。

例えば、ある患者さんが遺伝子検査を受けて、がんになりやすい遺伝子を持っていることが明らかになったとします。

すると、、その血縁関係にある方全て(厳密には全てではない)ががんになりやすいことが明らかになるのです。その情報が例えば保険会社などに漏れてしまうと、何が起きますか?

申告事項は問題ないのに、遺伝子的に将来がんを発病するリスクが高いとして保険に入れない、などの不利益が生じてしまう可能性があるのです。

もしもあなたが、会った事もない遠戚の遺伝情報が漏れたために生命保険に入れなかったら、、これまでそのような事例は聞いたことがありませんが、起こり得る事態と考えられているため遺伝情報は厳に管理されているのです。

 

そんな怖い遺伝情報なのに、なぜ最近注目を浴びているのでしょうか?

それは「遺伝情報は有力な治療ターゲットになる」ためです。毎年のように分子標的薬が発表されていますが、これらの多くは遺伝子異常を狙った治療薬であり、かなり良好な治療成績を上げているのです。

他のメリットとして、先に遺伝情報を知ることでがんを予防することができるようにもなっているのです。

 

アンジェリーナ・ジョリーをご存知ですか? ハリウッド女優です。ブラッド・ピッドの奥さんですね。

実は、彼女には両乳房と卵巣がありません(これは公表されている情報です)

 

彼女は遺伝子検査の結果BRCAという遺伝子に異常があり、将来乳癌と卵巣癌を発症するリスクがかなり高いと分かったため、予防的に乳房と卵巣を切除したのです。

BRCA遺伝子変異がある場合、70歳までに乳癌を発癌する可能性は75%、卵巣癌を発病する可能性は30-50%(小規模研究において、より高いとされる結果もあり)と報告されています。このリスクは本人のみならず、遺伝情報を共有する子孫にも引き継がれる可能性があるのです。遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)と呼びます。

そのため、アンジェリーナは手術を決断したのですね。

これはリスク低減乳房切除術/卵巣切除術(RRM/RRSO)と呼ばれる手術で、近年日本においても保険適用となりました。

2022年の報告で、BRCA1/2遺伝子は乳癌卵巣癌、膵癌、前立腺癌の他に様々ながんの発癌に影響することが示されました。BRCAをターゲットにした分子標的薬もいくつかあり、特に卵巣癌において良好な治療成績を上げています。今後ますます注目される遺伝情報となるでしょう。

 

もしもこのコラムを読まれて不安に思われた方がいらっしゃいましたら、遺伝カウンセラーもしくは臨床遺伝専門医に相談することをお勧めします。

「究極の個人情報を調べること」は諸刃の剣です。自分や子孫の発癌を予防できる可能性がある一方、周囲の人間の人生に影響する可能性もあります。

まずはよく知ることから始めてみましょう。

 

肩休めのつもりが力が入り過ぎてしまいました。

次回はICFについて。休日コラムは「癌」と「がん」の違いについて書いてみようと思います。

本日もありがとうございました。

 

西宮市の訪問診療、在宅医療、往診

ケイ往診クリニック 医師

松原 翔

生きることの全体像~ICF~①

こんにちは。

だいぶ暖かくなってきました。春は本当に気持ちの良い季節です。毎年この季節を迎えられたことをとても有難く思ってしまいます。

さて、今日のテーマは表題の通りです。

 

テーマに??と思った方、私も2年前まで同じでした。実は病院、特に急性期病院に勤務しているとほとんど接することがない言葉なのです(在宅医療に携わる今となっては、病院の医療者にも知ってほしい内容だなぁと少し思っています)。

前回のお話のなかで、「在宅療養は両輪で回る」と書きました。それは「医療」と「介護」です。

この医療と介護を結ぶ車軸にあたるところが今回のテーマ、「ICF」です。

 

??と思った方、私も同じでした。今日はこのICFについて医療者視点から少し話してみようと思います。ICFと聞くと「私には関係ないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、療養者さんや御家族に知ってもらうことは意味のあることだと思っています。

なぜならICFは在宅療養を支える中での「共通言語」だからです。自分や家族のことなのに、自分達の知らない言語で回りが動いていたら怖くありませんか? 今日のお話が在宅療養の一助になれば幸いです。

 

尚、もしもケアマネージャーや介護福祉士など介護の専門職の方が本記事や関連記事を読まれて「それは違う!」と思われることがあれば、是非とも本ホームページのお問合せフォームかメールフォームより、もしくは直接対面でもご意見をお寄せください。批判や勉強の機会をいただくことは大変ありがたいことです。

 

さて、ICFとは何でしょうか。英語で書くとInternational Classification of Functioning, Disability and Healthです。

より一層??ですね。わかります。

では日本語で書けばどうなるでしょうか。ICFは「国際生活機能分類」です。まだ??ですね。

ICFとは患者さん(利用者さん)の生活全体を網羅する視点です。療養する方の生活を様々な視点から観ることより、生活を支えるためにはどのような支援が必要かを考えるのです。

 

ICFは医療とも密接な関係があります。

医学の父ヒポクラテスの時代から、医療は「病気を治すこと」に主眼をおいてきました。その結果医療は高度に発展し、昔は治らなかった疾患が治るようになりました。現在も様々な医療技術や新薬が毎年のように発表され、患者さんの予後を改善しています(婦人科腫瘍チームで動いていた時は毎年新しく出てくる分子標的薬を学び、その治療効果が発表されると知識をアップデートして現在の標準治療と比較検討し、手術においても新たな術式やデバイスが出てくるので習得し、、と医療の日進月歩を肌で感じていました)。

ですが、医療が進歩しても患者さんは「元の生活」に戻れるとは限らないのです。医療の力によってしんどい状態から「回復」したとしても、「障害」が残ってしまい医療や介護を必要とすることが多いのです。また、年を重ねると疾病の有無にかかわらず生活に支援を必要とする方も増えていきます。

今の日本において「治す医療」は当然不可欠です。しかし同時に「支える医療(治すことを目的とせず、患者さんの生活状況の維持と改善を目的とする医療)」も同じくらい必要だと思っています。

この「支える医療」を行う上で重要な視点が「ICF」です。この視点を「医療」と「介護」のプロが共有することにより適切な支援ができると考えています。患者さんや御家族も、ぜひ我々とこの視点を共有しましょう。

蛇足ですが、ICFと対になる言葉があります。それは「ICD」です。International Classification of Disease、国際疾病分類です。これは全ての医師が知っている内容で、「治す医療」に必要不可欠な視点です。

少し長くなってきましたので、中途半端ですが本日はこのあたりで。乱文で失礼いたしました。次回はICFについて具体的に書いてみようと思います。

 

本日もありがとうございました。

少しでも在宅医療への理解に繋がればと思い、本ブログで情報発信をしています。本ブログを読まれて不快な思いをされる方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

 

西宮市の訪問診療 ケイ往診クリニック

在宅療養を支えること

こんにちは。

ケイ往診クリニック医師の松原です。

本日は在宅医療を受けられる患者さんではなく、それを側で支えるご家族や介助者の方に焦点を当ててお話してみようと思います。

「親しい家族の療養を支える」、そう一言で書けば当たり前のことだと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は在宅療養する患者さんと生活することはエネルギーを要することだと思います。私自身としても、私の身近な人が在宅療養しており、その介助者の苦労と疲労を直にみてきました。

「親しい家族なので自分が頑張りますから、療養に関することは私に任せてください。」そうおっしゃるご家族に何度もお会いしたことがあります。そのたびに心に不安がよぎります。

誤解を恐れずに単刀直入に言います。

 

「頑張りすぎないでください。」

 

親しい間柄だからこそ距離感を誤ると本当に疲れてしまいます。いわゆる「介護疲れ」です。

全てを完璧にやらなくてもよいし、患者さんの要求にすべて応える必要はありません。心から信頼している人であったとしても冷たく当たってしまう、憎悪の気持ちがわいてしまう、もしもこういったことがあればあなたは疲れているかもしれません。一番避けたいことは患者さんとご家族の共倒れです。

大切なご家族と長く関係を保ち過ごすために大切なことは「ほどよい距離感」だと切に思います。

今日は疲れ切ってしまわないためにお勧めしたい、在宅療養を支える人をお伝えしたいと思います。

 

まず一人目は、代わりになって療養を支えてくれる人です。

例えば、患者さんの食事を代わりに作ったり、移動のお手伝いをしてくれたり、身の回りのことをしてくれる人です。

もし介護保険をお持ちでしたらケアマネージャーさんに相談してみてはいかがでしょうか。

在宅療養は医療と介護の両輪で回ります。我々医師は医療についてのプロフェッショナルですが、ケアマネージャーさんは在宅療養や介護のプロフェッショナルです。きっといい相談に乗ってくれると思います。

 

二人目は、知らない情報を教えてくれる人です。

患者さんが今後どういった経過をたどるのか、どういった治療方針になるのか、その結果生活がどのように変わるのか、どういったケアをすればよいのか。

我々医師や看護師、訪問薬剤師に相談してください。我々が持てる情報は全てお伝えします。

 

三人目は、気持ちを吐き出せる人です。

ここの部分が今日もっとも言いたかったことです。先にも書きましたが在宅療養を支えることはエネルギーを必要とします。時には患者さんに憎しみに近い感情を抱いてしまったり、介護のつらさを吐き出したいこともあるでしょう。ですが、迂闊に周囲に気持ちを漏らしてしまうことで「家族のことを悪く言うなんて。」という目で周囲からみられるかもしれないと悩んだり、家族や介護についてネガティブな感情を持ってしまうことに対して自己嫌悪を感じてしまう方が多いように思います。

私の個人的な意見ですが、いくら身近な人でもツラい時にネガティブな感情が湧いてしまうのは自然なことだと思います。それを上手に吐けない方は、そのつらさを投げてしまえる人を見つけてみてはいかがでしょうか。

例えば、我々医療者です。ヘルパーさんやケアマネージャーさんもサポートをしてくれると思います。

つらい気持ちはさっさとサポーターに手放してしまいましょう。弱音や愚痴は吐いてもいいんです。

 

それでもダメなときは?? その時は物理的に距離をとってみるのはどうでしょうか?

介護保険を使える方はショートステイ、医療要求度が高い方はレスパイト入院など利用できる制度を利用して心をリフレッシュさせてみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに私の知っている患者さんとご家族でこんな方がいらっしゃいます。

ショートステイやレスパイトを始める前は口を開けば言い争いでまともな会話もなかったのに、ほどよい距離感を見つけてからは笑顔で思いやりが溢れています。

喧嘩ばかりの姿ばかり見ていましたが、この素敵な関係が療養を始める前の本当のお二人なんだろうとしみじみと感じました。

 

本日もありがとうございました。

少しでも在宅医療への理解に繋がればと思い、本ブログで情報発信をしています。本ブログを読まれて不快な思いをされる方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

 

西宮市の訪問診療、在宅医療、往診 ケイ往診クリニック

医師 松原 翔

 

病院と在宅の医療

こんにちは。

ケイ往診クリニックの医師 松原です。

今日は少し趣向を変えたお話をしてみようと思います。「病院と在宅の医療の違い」です。

当院は訪問診療、在宅医療を主として診療していますが、在宅医療が病院での既存の医療と根本的に異なることはなんでしょうか?

検査? 点滴? 手術?? もちろんこのあたりは病院と在宅で異なります。しかし、それ以上に根本的に異なることがあるのです。これは私が在宅医療を仙台で始めた際に最初に学んだことでもあります。

 

それはズバリ「ホストとゲストの関係」です。

普段元気な方が体調を崩したりして病院を受診する際の関係は、我々医療者がホスト(迎える側)であり、患者さんはゲスト(訪問者)になります。

では在宅医療では? これは全く逆の立場になります。在宅医療では我々医療者が生活の拠点であるお宅へお伺いするわけなので、我々医療者はホストからゲストとなるのです。

 

このことが患者さんにどういった関係があるのでしょうか?

私は患者さんの権利を守ることに繋がると思っています。患者さんには病院や医師を自由に選ぶ権利があります。このことはリスボン宣言に明記されており、患者さんが胸を張って主張していい権利です。

でも病院へ受けに行く医療だと、知らず知らずのうちに我々医療者に気を遣ってしまうことはありませんか?

例えば、「こんなことを聞いてみたいけど、もしくは方針が私が考えていることと違うけど、それをお願いして主治医の気を害したらどうしよう。そのことでぞんざいな扱いされて不利益を被るかもしれないのはいやだな」「めんどくさい患者と思われたらいやだな」といったことです。

本来であれば治療を選ぶ権利は患者にあり、方針が合わないと感じれば病院を医者を変えてもいいのです。でも「ゲスト」である患者さんや家族さんが「ホスト」である医療者に意見を言いにくい構図があるのかもしれません(特に日本の場合)。宛先の書かれていない紹介状を渡されて医療難民になってはどうしようといった不安もあるかもしれません。

 

では在宅医療ではどうでしょうか? 在宅医療の場合は患者さんや家族さんは「ホスト」であり、家の主です。気に食わない医療者が来た場合は胸を張って「NO」と言えばいいのです。家に上げるかどうかは患者さんとご家族の選択です。

我々は患者さんの権利を最大限尊重します。「NO」と言われないよう最大限の配慮をします。これも「寄り添う医療」の一つだと考えています。

ただ、いくら患者さんが「ホスト」だとしても、医療の正当性に反することはできません。その場合は我々は医療のプロフェッショナルとして「NO」と言わざるを得ないことがあります。どうかご理解ください。

 

本日は病院と在宅の医療の違いについて、思うところを話してみました。

逆に病院と在宅の医療で根本が同じこともあります。それは患者と医師の関係性です。

医師と患者さんを結ぶ関係は何でしょうか? これは実は一言で言えば「契約関係」です。我々医師と患者さんは、お互いの信頼の上に成り立つ契約の上に立ち、医療のプロフェッショナルとして知識と技術を提供しています。

この「契約関係」自体は病院での医療と在宅医療で全く変わりません。医療契約については機会があればまた触れてみたいと思います。

 

本日もありがとうございました。

少しでも在宅医療への理解に繋がればと思い、本ブログで情報発信をしています。本ブログを読まれて不快な思いをされる方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

 

西宮市の訪問診療 ケイ往診クリニック

医師 松原 翔

在宅での緩和ケア②

こんにちは。

今日は前回に引き続き、当院での在宅緩和ケアについてお話したいと思います。

 

緩和ケアで取り組む問題には①身体的問題②心理社会的問題③スピリチュアルな問題があることは前回お話した通りです。

実はこれら全ての問題に対して医師一人でケアができるわけではありません。特に②心理社会的問題、③スピリチュアルな問題、これらについてはなおさらです。在宅医療には様々な職種が関わりますので、誰か一人でも信頼できる人を見つけて不安やつらさを打ち明けてみてはいかがでしょうか? 直接的な解決にはなりませんが、「誰かに話す」「気持ちを共有する」これだけで不安が和らぐことがあります。

私を含むケイ往診クリニックは「寄り添う医療」を常に考えています。我々は患者さんと家族さんとつらさを共有し、それに寄り添っていきたいと考えています。もしお話できることがあるのなら、少しでも感じている気持ちを打ち明けてみてください。

そのことで少しでも患者さんや家族さんのつらさが和らぐなら医療者冥利につきます。私も患者さんとそういうお話ができる関係を作れるよう精進していきたいと思います。

 

さて、①身体的問題についてはどうでしょうか。これは医療的側面が強いのでイメージしやすいですね。

当院で行っている、在宅で可能な緩和医療を羅列してみると下記のようになります。

・医療用麻薬の内服、座薬、貼付剤処方、持続皮下注射 ・在宅酸素 ・呼吸器 ・胸水、腹水穿刺による症状緩和

・座薬、注射薬による症状緩和のための鎮静

他に中心静脈栄養や経管栄養など。

医学用語が並んでしまいましたので、少し難しく感じてしまうかもしれません。

身体的問題の当院での取り組みについては次回以降で少しかみ砕き掘り下げてお話しようと思います。

本日もありがとうございました。

 

西宮市の訪問診療 ケイ往診クリニック

医師  松原 翔

在宅での緩和ケア①

こんにちは。

本日は当院で行っている、在宅医療における緩和ケアについてお話したいと思います。

 

まず緩和ケアの定義ですが、「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者と家族に対し、身体的問題/心理社会的問題/スピリチュアルな問題を早期に発見し的確に対処することにより、苦痛を予防し和らげることで生活の質の改善を目指すアプローチ」とされています。文字にすると難しく感じますね。

 

私なりにシンプルに言い換えれば、「病気が原因で起こる様々な問題に対処することで、苦痛を少しでも取るためのケア」ということです。

「生命を脅かす疾患」の代表格は「悪性腫瘍」いわゆる「がん」です。他に末期の呼吸器疾患(COPDや間質性肺炎等)、心不全などがあります。

では身体的問題/心理社会的問題/スピリチュアルな問題とは何でしょうか?

身体的問題とは、上記の疾患により引き起こされる様々な症状のことです。例えば、「痛み」「息苦しさ」「だるさ」などです。これは医療と結び付けやすく、イメージしやすいと思います。

心理社会的問題とは?? これは例えば経済的な問題や、周囲との関わりの中で生じる苦痛です。例えば「私がいなくなったら残された家族の生活費をどうしよう」「残された家族はどれだけつらい思いをするだろう」「やり遂げたかった仕事があるのに、達成できないかもしれない」といったことです。

では、スピリチュアルな問題とは?? これはイメージしにくいかもしれません。「亡くなることにより私の魂や意識はどうなるのか」「天国に行けるのだろうか、地獄だったら嫌だな」といった、やや哲学的・宗教的な内容を含みます。

生命の危機に立たされた方は、程度の大小はあれど上記のような問題に直面し苦しまれます。これらの問題を少しでも和らげようとする試みが緩和ケアということになります。

前置きが少し長くなってしまいました。次の記事で当院で行っている緩和ケアについてお話できればと思います。

今後とも宜しくお願いいたします。

 

西宮市の訪問診療 ケイ往診クリニック

医師 松原 翔

訪問診療と往診

地域の皆様へ。

当院は訪問診療と往診を中心に診療を行っております。訪問診療と往診の違いをご存知でしょうか?

一昔前は、医師が患者様のお宅に伺う医療は往診と一括りにされていましたが、今は訪問診療と往診で定義が異なります。

訪問診療は前もって訪問予定時刻をお伝えさせていただき、普段の健康管理や定期薬の調整を行います。「体調を崩されないように、ご自宅で安心して過ごせるようにお手伝いさせていただく」医療です。

往診とは体調を崩されてしまった場合やその他医療が必要と考えられる場合に、予定外に療養先へ伺い医療行為を行うことです。

訪問診療と往診はセットとお考えください。当院では訪問診療を行っている患者様に限り、24時間365日の電話相談および往診を行います。

「普段の診療はいらないから体調を崩した時だけ(往診だけ)来てほしい」というお気持ちはわかりますが、在宅医療では利用できる医療資源が少ないです。そのため普段の状態を診ていないと判断を誤る可能性もあるため、ご理解をいただけますと幸いです。

これからも地域の皆様に役立てる情報を発信していければと思います。よろしくお願いいたします。

 

ケイ往診クリニック 医師

松原 翔