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生きることの全体像~ICF②~

こんにちは。

GWも折り返し、、でいいのでしょうか。医師という職業を選んでからこのかた、GWや盆、正月といった日に長期休みをとれた試しが無いので、世間一般の感覚がよくわからなくなっています。「医師は世間知らず」ということはよく聞きます。自覚はあります。

 

さて本日はICFについて少し掘り下げたいと思います。

ICFとは生活全体を俯瞰するためのツールであり、分類です。生活に関連した分類なので、実は障害の有無にかかわらず全ての人を対象とすることができます。

まずは生活を二つの視点から見てみます。①「生活機能と障害」②「背景因子」です。

 

①「生活機能と障害」とはA「身体にある障害の有無や程度」、B「今の身体で出来ること、出来ないこと、その結果どこまで活動に参加できるか、しているか」という視点です。

障害自体は加齢により背負ってしまうこともありますが、病気が原因となっていることもあります。ですので、ここで「ICD(国際疾病分類)」とリンクしています。

A「障害の有無や程度」は身体を客観視します。どこにどのような障害があるのかを分類していきます。

例えば、「脳梗塞が原因で右半身麻痺と失語症がある」といった具合です。これを障害の種類と程度でコード化します。

B「今の身体で出来ること、出来ないこと」は日常生活にどこまで制限が出ているかを分類するものです。細分類として「一人でどこまで出来るか」「手助けや福祉用具を用いればどこまで出来るか」という評価があります。

例えば、先の方で言えば「片麻痺があるため望むところへ移動できない(一人の場合)」が「車椅子を用いて外出することができる(手助けや福祉用具を用いてどこまでやっているか)」といった具合です。

この場合だと、「片麻痺があるため望むところへ移動できない」は「d460.4」に該当します。「d460」は「移動すること」に関する項目、「.4」は「~することが非常に困難である」という意味合いです。

この方は一人では移動できないのに、車椅子を用いれば移動できますね。その場合は「d460.1」となります。「.1」は「~することが少しの困難を要する」です。支援の力により生活機能が向上していることが示されました。

これを生活の様々なシーンに当てはめて行くわけです。

例えば「食事」「トイレ」「入浴」「会話・コミュニケーション」「認知」などです。

このように系統立てて見ていくことで、その人が一人だとどうなのか、支援の力を使うとどうなのか、ということを把握し共有することができます。

ここまでは日常生活レベルのお話ですが、ICFではさらに踏み込んで、「どこまで社会に参加しているか」も見ています。

先の例だと「(右片麻痺と失語があるが)デイサービスに参加している」は「d910.1」といった具合です。

 

②「背景因子」

ICFでは個人の障害のみならず、周囲や個人がおかれている状況にも目を向けています。

その人がおかれている環境や、その人自身の影響力を観る視点です。

例えば上記の方が、階段のみでエレベーターの無いマンションの高層階に住まれていた場合とバリアフリーのお宅に住まれていた場合では、外出に関わる困難さが明らかに異なりますね。

環境因子はそういった周囲の環境を分類していきます。住環境のようなわかりやすいものから、「気候」「住民サービス」「政治」といったものまで含みます(国際分類ですので、例えば日本の医療、介護、福祉サービスは世界を見渡しても非常に高水準ですが、他の国を見渡したときに同じサービスを受けられるとは限りません)

他にもその人自身のキャラクターや性格が生活に影響することもあります。そういった視点もICFは持ち合わせています。

 

いかがでしたでしょうか。正直わかりにくいと思います。しかもICFの分類全てを全員に当てはめて行こうとすればいくら時間と労力があっても足りません。私たちもパッと「d480.3」とか言われても、コード表を見ないと何のことかわかりません。

大切なことは分類に一生懸命になることではなく、こういう視点を共有して持つことだと考えています。

各々がバラバラの評価尺度で患者さんを観ていれば適切な支援がわからなくなってしまいます。そういうときの「ICF」ではないでしょうか。

「生活全体を見つめる視点」を大切に、寄り添う医療を続けていきたいと思います。

 

本日もありがとうございました。

少しでも在宅医療への理解に繋がればと思い、本ブログで情報発信をしています。本ブログを読まれて不快な思いをされる方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

 

西宮市の在宅医療 訪問診療

ケイ往診クリニック 医師

松原 翔